○草津町普通索道運転取扱心得

昭和三十四年十二月七日

規則第六号

第一章 総則

(目的)

第一条 この運転取扱心得(以下心得という。)は、索道規則並びに関係法規にもとずいて、索道の運転について規定したもので輸送を安全、正確、かつ迅速に行うことによりその使命の達成を図りもつて公共の福祉を増進することを目的とする。

(心得の適用)

第二条 索道の運転については、別に定めるものの外、すべてこの心得による。この心得の意味に疑のある場合は事業部長(以下部長という。)の解釈によらなければならない。もしそのいとまのないときは、この心得の趣旨に則り最も安全と認められる取扱をしなければならない。

(運転取扱の計画)

第三条 駅長は、この運転取扱の実施にあたつて、関係者との連絡方法、作業順序、作業方法等に対してあらかじめ計画しておかなければならない。

(用語の意味)

第四条 この心得に使用する用語の意味は、次のとおりとする。

 停留場とは、旅客を扱うため搬器が停車する場所をいう。

 搬器とは、人を乗せるものをいう。

 捲上装置とは、動力により索条を循環させる装置をいう。

 索条とは、搬器をつるすか又は搬器を曳行する鋼鉄製のワイヤーをいう。

 支柱とは、索条を高く支える柱をいう。

(腕章の着用)

第五条 乗客掛、運転掛、監視掛は勤務中次の腕章を着用しなければならない。

1 乗客掛

画像

2 運転掛

画像

3 監視掛

画像

第二章 係員

(運転の安全確保)

第六条 索道の運転にあたつては、係員の知識技能及び運転関係の設備を総合活用してその安全確保に努めなければならない。

(知識技能の保有)

第七条 係員は、索道を安全に運転するために充分な知識技能を保有しなければならない。

(心身異状の場合)

第八条 係員が心身の状態によつて、その知識技能を充分発揮できないと認められるときは、索道の運転その他直接運転の安全に関係する職務に従事させてはならない。

(係員に対する監督)

第九条 係員を監督する職にあるものは、係員に対し索道の運転中又はその他適宜なときに運転上必要な指示を与える等、適切な監督をしなければならない。

第三章 運転

(運転状況の記録)

第十条 索道を運転したときは、次の事項を記録しておかなければならない。

 運転度数

 輪送人員

 天候状態(風向、風速)その他運転保安に関する必要な事項

(索道等の整備)

第十一条 捲上装置、搬器、索条、支柱、停留場、その他の工作物は常に完全な状態に整備しておかなければならない。

2 施設が一時前項の状態でないと認められたときは運転してはならない。

(始業点検)

第十二条 索道は、一日一回その使用前に一循環以上の試運転を行い、捲上装置、搬器、索条、支柱、その他の工作物を点検しなければならない。

(運転時刻等)

第十三条 索道の運転は、定められた発着時間によつて運転しなければならない。

2 発車時刻その他運輸に関する必要な事項は、停留場その他見易い場所にこれを提出しなければならない。

(運転中の執務)

第十四条 運転掛及び監視掛は、索道の運転中、所定の位置を離れてはならない。

(逆行運転の禁止)

第十五条 索道は、事故の場合を除く外、最初進行させた方向と逆な方向に運転してはならない。

(最大乗車人員)

第十六条 搬器には、その最大乗車人員をこえて、人を乗せてはならない。

2 最大乗車人員で表示される搬器に十二才未満の小児を乗せ、または荷物を積むときは、次の各号の人員または、重量ごとに最大乗車人員上の一人として換算し、は数を生じたときは、切り上げるものとする。

 十二才未満の小児にあつては一・五人

 荷物にあつては六十キログラム

(搬器内に危険物の持込禁止)

第十七条 搬器には別表の危険品を持込ませてはならない。

(危険品運送の制限)

第十八条 索道は、マグネシユーム粉、過酸化水素、過酸化ソーダ、その他の爆発性物質を積載した搬器と人の乗り込んだ搬器と同時に運転してはならない。

(途中停止の制限)

第十九条 事故または、止むを得ない場合の外、搬器を運転の途中において停止させてはならない。

(転落防止)

第二十条 索道の搬器を出発させるときは、人または物の転落を防止させるために扉を閉じ、さ錠しなければならない。

(運転整理)

第二十一条 臨時に索道を運転するときまたは中止するときは部長の指令を受けなければならない。但し通信不能のため、その指令が得られないときは、駅長が専決して行つてもよい。

2 前項但し書の取扱をしたときは、駅長はその状況を部長に報告しなければならない。

(搬器の転動防止)

第二十二条 索道の運転を停止している間は、捲上装置の制動機を緊締する等転動防止の処置をしておかなければならない。

(運転速度)

第二十三条 運転速度は秒速二・〇メートルを超えて運転してはならない。

(打合せの徹底)

第二十四条 索道の運転について、電話若しくは、口頭で行う打合せ又は通告は、正確に行い、相手方はこれを復唱する外、重要な事項は記録しておかなければならない。

(駅長の発着監視)

第二十五条 駅長は、索道を運転するとき及び運転中は時々監視しなければならない。

(索道の運転の方向の呼称)

第二十六条 索道の運転方向は白根山麓停留場から白根山頂停留場に向うのを、「下り」その反対を「上り」としなければならない。

(搬器の間隔)

第二十七条 搬器の運転間隔は搬器が出発してから次の搬器が出発するまでに六十秒以上としなければならない。

(出発合図)

第二十八条 索道を運転しようとするときは、次の順序を経て出発合図を行わなければならない。

 白恨山麓駅長は、出発準備が完了したときは、白根山頂駅長に対し出発準備完了合図を行う。

 白根山麓駅長は、白根山頂駅長の出発準備完了合図を確認したのち、運転に差支えないときは、運転掛に対し出発合図を行う。

(運転開始合図)

第二十九条 運転掛は、前条の出発合図を確認したのち、運転を開始するときは、運転開始合図を白根山麓駅長にしなければならない。

(索道の運転の停止)

第三十条 索道の運転を停止するときは、駅間の途中にある搬器内に乗客のないことを確めた後でなければ、これを停止してはならない。

(非常の場合の運転停止)

第三十一条 索道の運転中に運転上危険と認められる事態が生じたときは、すみやかに運転を停止し、旅客の安全を図らなければならない。

第四章 信号

(信号の種類)

第三十二条 信号の種別は、次の通りとする。

 手信号

 合図

 標識

(表示方式の昼夜別)

第三十三条 昼間と夜間とで現示方式又は表示方式を異にする信号は日出から日没までは昼間の方式により、日没から日出までは夜間方式によらなければならない。但し、天候の状態その他で昼間の現示又は表示を識別することができないときは、夜間の方式によらなければならない。

(手信号)

第三十四条 手信号は、特に必要あるとき行うもので、その方式は次による。

方式

種類

昼間

夜間

停止信号

赤色旗、但し赤色旗がないときは両腕を高くあげるか、又は緑色旗以外のものを激しく振つてこれにかえることができる。

赤色灯、但し赤色灯がないときは、緑色灯以外の灯を激しく振つてこれにかえることができる。

通行信号

緑色旗、但し緑色旗がないときは片腕を高くあげてこれにかえることができる。

緑色灯

(出発準備完了合図方式)

第三十五条 出発準備完了合図は、次の方式によつて行う。

画像

(出発合図方式)

第三十六条 出発合図は、次の方式によつて行う。

画像

(運転開始合図方式)

第三十七条 運転開始合図は、次の方式によつて行う。

画像

(停留場・運転室の呼出方式)

第三十八条 停留場及び運転室の呼出は、次の方式によつて行う。

画像

(合図の取消)

第三十九条 合図の取消は、次の方式によつて行う。

画像

(停留場・搬器及び運転室相互間の非常の場合の連絡方法)

第四十条 停留場、搬器及び運転室相互間の非常の場合の連絡は無線装置によつて行わなければならない。

(搬器の発車間隔標示機)

第四十一条 搬器を発車させるときは、搬器の発車間隔標示機によらなければならない。

(搬器の発車間隔標示方式)

第四十二条 搬器の発車間隔標示は、次の方式によつて行う。

赤色灯 搬器を発車させてはならない。

橙色灯 搬器の発車用意を表わす。

緑色灯 搬器を発車させてもよい。

(搬器の標識)

第四十三条 夜間又は天候の状態により搬器の識別が困難な場合に索道を運転するときは、搬器の前部及び後部に標識を掲出しなければならない。

(搬器の標識の表示方式)

第四十四条 前条による標識は、次の方式により、これを表示するものとする。

前部に菫色灯一個以上、後部に橙色灯一個以上

第五章 事故の処置

(異例事故の処置)

第四十五条 この心得に定めてない事態が発生したときは、その状況を判断した上、この心得の趣旨に則り、索道の運転に対して最も安全と認める手段により、機宜の処置をとらなければならない。

(予備原動機の使用)

第四十六条 部長は、停止事由が電源または電動機の故障で復旧が容易にできないと認めたとき及び除行の必要ある時は予備原動機に切換えなければならない。

2 予備原動機に切換えるときは、関係箇所と充分打合せて行わなければならない。

(救助方法)

第四十七条 索道の運転事故が発生し、旅客を救出する必要があると認めたときは、次の方法によつて救出しなければならない。

 運転掛は駅長に対し、その状況を通報する。

 長時間になると認めたときは、その状況に応じ応急下降機を使用して旅客を待避させる。(救助方法は別に定める)

 前号の場合旅客の降下地点の難易、障害物の有無等について充分注意し、降下に支障ないように努める。

(途中の運転開始)

第四十八条 事故その他の事由で索道が途中に停止した後、更に運転を開始するときは、次の各号によらなければならない。

 運転掛は、白根山頂及び白根山麓駅長に対し、索道を運転しても差支えないことを確めること。

 白根山頂及び白根山麓駅長は、索道の運転に支障のないことを確めた後第三十六条の取扱をすること。

 運転掛は、運転を開始するときは、第三十七条の取扱をする外、加速の状態に特に注意すること。

(気象警戒)

第四十九条 索道の運転または保安に従事するものは、気象特報をうけたとき、または天候が不安になつた時は、その警戒を厳重にしなければならない。

(強風の処置)

第五十条 駅長は、風速が毎秒十メートル以上となつたときは、特に注意し、毎秒二十メートル以上となつたとき、又は突風のおそれのあるときは、索道の運転を中止しなければならない。

(濃霧、吹雪の処置)

第五十一条 運転掛は、濃霧又は吹雪のときは、特に注意して運転しなければならない。

(通信不能及び搬器の発車間隔標示機の故障の場合の処置)

第五十二条 「出発準備完了合図」、「出発合図」、「運転開始合図」等の重要な通信及び「搬器の発車間隔標示機」又は「搬器の非常灯」等が故障となつたときは、索道の運転を中止しなければならない。

(事故の報告)

第五十三条 索道の運転に関する事故が発生した時は、駅長は主任にすみやかに次の各号の要旨を急報しなければならない。

 事故の種類

 事故の程度

 事故発生の時刻及び場所

 搬器の番号

 関係者の氏名

 死傷者の有無とその情況

 その他必要事項

2 前項の報告を受けた主任は、直ちに上長に連絡しなければならない。

(事故の種類)

第五十四条 事故の種類は、次の通りとする。但し二種類以上の事故が併発した時は、次の順序に従い当該事故発生のうち最先位のものとする。

 索条切断 索条が切断した場合

 搬器落下 搬器が落下した場合

 搬器衝撃 搬器が他の搬器と衝突し、もしくは接触した場合、または工作物に衝突し、もしくは接触した場合

 運転装置故障 搬器の移動装置、または受電装置及びこれらに附帯する保安装置に故障を生じた場合

 搬器故障 搬器に故障を生じた場合

 工作物故障 索道の工作物に故障を生じた場合

 電源故障 電源に故障を生じ、所定の通り受電できなかつた場合

 死傷 搬器の運転に関し、人に死傷を生じた場合

第六章 雑則

(捲上機の取扱)

第五十五条 捲上機は、運転掛以外の者に取扱わせてはならない。

(作業の打合せ)

第五十六条 索道の運転に支障するような作業を行うときは、駅長と打合せた上、技術課長の承認をうけなければならない。

この規則は、公布の日から適用する。

別表

1 火薬類(火薬類取締法「昭和二十五年法律第百四十九号」の火薬を云う。)

2 百gをこえる玩具用煙火

3 揮発油・燈油・軽油・アルコール・二硫化炭素その他引火性液体(喫煙用ライター及び懐炉に使用しているものを除く。)

4 百gをこえるフイルムその他のセルロイド類(ニトロセルローズを主材とした生地・製品・半製品及びくずをいう。)

5 黄燐・カーバイト・金属ナトリウムその他の発火性物質及びマグネシウム粉・過酸化水素・過酸化ソーダ・その他の爆発性物質

6 苛性ソーダ・硝酸・硫酸・塩酸・その他の腐蝕性物質

7 高圧ガス(高圧ガス取締法「昭和二十六年法律第二百四号」の高圧ガスをいう。)

8 クロルピリン・メチルクロライド・液体青酸・クロロホルム・ホルマリンその他の有毒ガスを発生するおそれのある物質

9 五百gをこえるマツチ

10 電池(乾電池を除く。)

11 前各号に掲げるものの外他の旅客に危害を及ぼすおそれのある物品

草津町普通索道運転取扱心得

昭和34年12月7日 規則第6号

(昭和34年12月7日施行)

体系情報
第10類 光/第3章 ロープウェイ
沿革情報
昭和34年12月7日 規則第6号