○温泉資源の保護等に関する条例

令和四年三月十五日

条例第六号

草津町において、温泉は、歴史的にも、経済・観光面においても、そしてまた日常生活を営むうえでも、欠かすことができない有用な天然資源である。

温泉が天然資源であるがゆえに有限である事実を踏まえると、地熱発電等の温泉資源の乱開発により、浴用・飲用として用いる温泉(熱・水量)を著しく上回る使用状態が現出した場合には、草津町民にとつて、温泉の持続可能な利活用が妨げられる恐れがある。

また、乱開発等によつてひとたび温泉の枯渇、湯量減少、湯温低下等の事象が生じた場合には、天然資源であるがゆえに、現状を回復することが著しく困難である。

そこで、草津町民が永年にわたつて温泉の恩恵を享受し続け、利活用し続けることが可能となるよう、本町が所有し又は管理する温泉を適正に保護、管理するため、本条例を定めることとした。

第一章 総則

(目的)

第一条 この条例は、草津町民の生活の礎となつている温泉を地熱発電等の温泉資源の乱開発から保護し、本町町民が浴用、飲用そして観光資源として温泉を利活用し続けることができるよう、本町が所有し又は管理する温泉資源を適正に保護、管理することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例で温泉とは、本町温泉使用条例第一条の定めるところによる。

第二章 温泉の保護等

(土地掘削の許可)

第三条 温泉を利用する目的で土地を掘削しようとする者は、本条例の定めるところにより、本町に申請してその許可を受けなければならない。ただし、当該許可には、本町が必要と認める条件を付し、またはこれを変更することができる。

2 前項の許可を受けようとする者(次の各号に該当する者を除く。)は、掘削に必要な土地について、掘削のために利用する権利(ただし、使用賃借権、無償地上権等無償利用権及び短期賃貸借等短期土地利用権を除く。)を有する者でなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合を除く。

 申請者が温泉法の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなつた日から三年を経過しない者であるとき。

 申請者が温泉法第九条第一項の規定により温泉法第三条第一項の許可を取り消され、その取り消しの日から三年を経過しない者であるとき。

 申請者が法人である場合において、その役員または従業員が前二号のいずれかに該当する者であるとき。

(許可の基準)

第四条 草津町長は前条第一項の許可の申請があつたときは、本町温泉使用条例第一条に基づき、本町温泉を保護し、その濫用を防止し、もつてその利用の適正を図るため、当該申請が次の各号のいずれかに該当する場合を除き、同項の許可をすることができる。

 当該申請にかかる掘削が温泉の湧出量、温度又は成分に影響を及ぼさないものであると認めることができないとき。

 地熱発電等浴用・飲用として用いる熱・水量を著しく上回る温泉の利用を目的とする場合であつて、本項第一号に該当するとき。

 前二号に掲げるもののほか、当該申請にかかる掘削が公益を害するおそれがあると認めるとき。

2 草津町長は前項第一項の許可をしないときは、延滞なく、その旨及びその理由を申請者に書面により通知しなければならない。

(許可の有効期間)

第五条 第三条第一項の許可の有効期間は、当該許可の日から起算して一年とする。

2 草津町長は、第三条第一項の許可にかかる掘削の工事が災害その他やむを得ない理由により当該許可の有効期間内に完了しないと見込まれる事情があるときは、当該許可を受けた者の当該事情の存在を疎明する資料を添付した申請により、一回に限り、一年を限度としてその有効期間を更新することができる。

(許可を受けた者の地位の承継)

第六条 第三条第一項の許可を受けた者の地位の承継については、これを認めない。

(工事の完了等の届出等)

第七条 第三条第一項の許可を受けた者は、当該許可に係る掘削の工事を完了し、又は廃止したときは、書面で、遅延なくその旨を草津町長に届け出なければならない。

2 前項の規定による届出があつたときは、第三条第一項の許可はその効力を失う。

3 草津町長は、前項により第三条第一項の許可の効力を喪失した者及び同項の許可を取り消したことにより同項の許可の効力を喪失した者に対し、当該許可の効力を喪失した日から三年間は、その者が掘削を行つたことにより、温泉の湧出量、温度又は成分に影響を及ぼさないよう、あるいは可燃性天然ガス・火山性ガスによる災害が発生しないよう、公益上必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

(許可の取り消し)

第八条 草津町長は、次に掲げる場合には、第三条第一項の許可を取り消すことができる。

 第三条第一項の許可に係る掘削が第四条第一項第一号から同第三号までのいずれかに該当するに至つたとき。

 第三条第一項の許可を受けた者が第三条第二項第一号又は同第三号のいずれかに該当するに至つたとき。

 第三条第一項の許可を受けた者が温泉法の規定又はこの条例の規定に基づく命令もしくは処分に違反したとき。

 第三条第一項の許可を受けた者が同項の規定により付された許可の条件に違反したとき。

2 草津町長は、前項第一号第三号又は第四号に掲げる場合には、第三条第一項の許可を受けた者に対して、その者が掘削を行つたことにより生じ又は生じうる、温泉の湧出量、温度又は成分への影響の防止あるいは可燃性天然ガス・火山性ガスによる災害の発生防止のため、公益上必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

(緊急措置命令等)

第九条 草津町長は、温泉を利用する目的で行う土地の掘削に伴い発生する温泉の湧出量、温度又は成分に影響を及ぼすことを防止する緊急の必要があると認めるときは、当該掘削を行う者に対し、掘削を停止すべきことその他必要な措置を命ずることができる。

2 草津町長は、温泉を利用する目的で行う土地の掘削に伴い発生する可燃性天然ガス・火山性ガスによる災害の防止上緊急の必要があると認めるときは、当該掘削を行う者に対し、可燃性天然ガス・火山性ガスによる災害の防止上必要な措置を講ずべきこと又は掘削を停止すべきことを命ずることができる。

(原状回復命令)

第十条 草津町長は、第三条第一項の許可に係る掘削が行われた場合において、当該許可を取り消したときは、その許可を受けた者に対して掘削を停止すべきこと及び原状回復を命ずることができる。

(無許可者に対する原状回復命令)

第十一条 草津町長は第三条第一項の許可を受けないで、温泉を利用する目的で土地を掘削した者に対しても、掘削を停止すべきこと及び原状回復を命ずることができる。

(温泉の採取の制限に関する命令)

第十二条 草津町長は、温泉源を保護するため必要があると認めるときは、温泉を利用する目的で第三条第一項の許可を受けて掘削する者に対して、掘削を停止すべきことその他必要な措置を命ずることのほか、温泉の利用の制限を命ずることができる。同項の許可を受けないで温泉を利用する目的で掘削した者に対しても、同様とする。

(隣接町村長への協議等)

第十三条 草津町長は、第三条第一項の規定による処分をする場合において隣接町村における温泉の湧出量、温度又は成分に影響を及ぼすおそれがあるときは、あらかじめその隣接町村長に協議しなければならない。

2 前項の隣接町村長は、前項の規定による協議を受けたときは、利害関係者の意見を聴かなければならない。

(他の目的で土地を掘削した者に対する措置命令)

第十四条 草津町長は、温泉を利用する目的以外の目的で土地が掘削されたことにより温泉の湧出量、温度又は成分に著しい影響が及ぶ場合において公益上必要があると認めるときは、その土地を掘削した者に対して、掘削の停止その他その影響を防止するために必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

2 草津町長は、法令の規定に基づく他の行政庁の許可又は許可を受けて土地を掘削した者に対して前項の措置を命じようとするときは、あらかじめ当該行政庁と協議しなければならない。

第三章 諮問及び聴聞

(審議会その他の合議制の機関への諮問)

第十五条 草津町長は、第三条第一項第四条第一項第九条又は第十二条の規定による処分をしようとするときは、別に規則で定める審議会その他の合議制の機関の意見を聴かなければならない。

2 草津町長は、前項の場合において、当該申請者ないし第三条第一項の許可を受けた者に対し、相当な期間を定めて、当該申請にかかる掘削が温泉の湧出量、温度又は成分に影響を及ぼさないことの裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該申請者ないし第三条第一項の許可を受けた者が当該資料を期間内に提出しないときは、当該申請にかかる掘削が温泉の湧出量、温度又は成分に影響を及ぼさないとは認められないものとみなす。

(聴聞の特例)

第十六条 草津町長は、第九条第二項又は第十二条の規定による命令をしようとするときは、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。

2 第九条又は第十二条の規定による処分に係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。

第四章 雑則

(報告徴収)

第十七条 草津町長は、この条例の施行に必要な限度において、温泉を利用する目的で土地を掘削する者に対し、土地の掘削の実施状況、可燃性天然ガス・火山性ガスの発生の状況その他必要な事項について報告を求め、草津町内各源泉について、温泉採取の実施状況、温泉の湧出量、温度、成分又は利用状況、可燃性天然ガス・火山性ガスの発生の状況その他必要な事項について報告を求めることができる。

(立入検査)

第十八条 草津町長は、この条例の施行に必要な限度において、その職員に、温泉を利用する目的で行う土地の掘削の工事の場所、温泉の採取の場所又は温泉利用施設に立ち入り、土地の掘削若しくは温泉の採取の実施状況、温泉の湧出量、温度、成分若しくは利用状況、可燃性天然ガス・火山性ガスの発生の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査し、又は関係者に質問させることができる。

(氏名の公表)

第十九条 草津町長は、第九条ないし第十四条のいずれかの処分を行つたときは、当該処分の名宛人の氏名(法人の場合はその代表者氏名を含む。)、住所その他必要な事項を、公表することができる。

(委任)

第二十条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

この条例は、令和四年四月一日から施行する。

温泉資源の保護等に関する条例

令和4年3月15日 条例第6号

(令和4年4月1日施行)